そろそろタオルケット出さなきゃね
2015.06.01
もう少し。あと200m。
私は暗いトンネルの中、眩い光の差している出口へ向かい走っていた。
体が重い。息が切れて苦しい。もう、諦めたい。
涙で視界が霞み前を上手く見ることが出来ない。
いつから走っていたのかさえ今となっては分からない。
気づいた時にはもう、私はここにいて走っていたのだ。
いっそのこと悪い夢であれば、と幾度も考えた。
漠然と分かっていることは、私はここにいるべきではないという事と、
早く外に出て、明るい外に出て陽の光を身に受けたいという事だった。
トンネルを抜けると、どこか見覚えのある林道に出た。
暗いところにいた事もあって、痛いほどの日差しに思わず目を瞑る。
青葉と、初夏の香りがした。涙と汗で濡れた顔をシャツの袖で拭う。
心音の荒波が引くのを待ちつつ辺りを見回すと、数十メートル先に
日傘をくるり、くるりと回しながらこちらを眺めている女性がいた。
「あら」
私に気づいたのだろう、女性はふんわりと柔らかく微笑んで続けた。
「また入口に戻ってきたのね」
目を覚ますと見覚えのある私の部屋だった。
いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
部屋は暗く、電源を切り忘れていたノートパソコンだけが
あの時に見た出口のように辺りを照らしていた。